インフルエンサーマーケティングの需要が世界的に高まっている。その一方、マーケターたちを悩ませるのが効果測定だ。インフルエンサープラットフォーム「iCON Suite」(アイコンスイート)では、機械学習と自然言語解析・画像解析を用いたインフルエンサーのファン分析により、最適かつ効率的なキャスティングを実現する。
インフルエンサーマーケティングの需要が世界的に高まっている。その一方、ブランドのマーケターたちを悩ませているのが、その効果の測り方だ。
投稿に対するエンゲージメントが高まったとしても、きちんとブランディングに寄与できているのか? より深いビジネスへの貢献が求められているいま、費用対効果は取れているのか? など、新しい手法がゆえに、不透明な部分は、まだまだ残されている。
こうした現状について、インスタグラムやTwitterなどのSNSで影響力をもつインフルエンサーのキャスティングツール「iCON Suite」(アイコンスイート)を手がける、THECOO(ザクー)代表取締役CEOの平良真人氏は、「ソーシャルプラットフォームが多様化し、それぞれの特色に応じた施策を、マーケターたちが試行錯誤している段階」と説明する。
「インフルエンサーの人気度のみならず、フォロワーとのやり取りやコンテンツのスタイル、あるいはフォロワーのデモグラフィック情報などを総合的に勘案しながら、最適な施策を企画・実施していくことが大事だ」。
とはいえ、顧客とブランドとの接触機会は多様化しており、最終的なコンバージョンに至る経路をすべて計測するには、コストやテクノロジーの見合いで難しい面がある。しかし、平良氏は「現状取れるデータで、ある程度効果を可視化することは可能だ。それができないと継続的なアクションのプランニングにも役立たない」という。
マーケターが望んでいるもの
実際に、アパレル企業である株式会社パルのディレクター・植原邦雄氏は、ネット活用のひとつの手法としてインフルエンサーマーケティングに注目した。同氏が担当するブランド「ディスコート(Discoat)」は、レディースに加えてメンズラインも拡充している最中で、全国に60もの店舗を擁している。
従来の紙メディアは、「誰が何冊買って、どれくらい見ているか、費用対効果が明確に見えない」点に課題を感じていた植原氏。今後はインターネットに狙いを定め、この2〜3年でECサイトの売上を倍増させることを目標に掲げた。そこで、新たな認知度拡充策として目をつけたのが、Facebook、インスタグラム、Twitterといったソーシャルメディアだ。
その件を、平良氏に相談した植原氏は、何度かミーティングを重ねた結果、「自社でも公式アカウントを運営するSNSのなかで、特にファッションとの親和性の高いインスタグラムを活用したキャンペーンを、2016年の秋冬シーズンから試行することにした」という。
インフルエンサー情報を可視化
ディスコートの課題について、平良氏は「西日本に比べ、首都圏における認知度が比較的低い一方で、インターネットの需要が伸びている」点に着目した。そこで、「関東近郊の店舗へ来店可能な地域に住む、30代以降の女性を主なターゲットに、顧客獲得と来店促進を狙ったプロモーション」を提案。そして、インスタグラムにおけるインフルエンサーのキャスティングは、THECOOの「iCON Suite」を使って行った。
機械学習と自然言語解析・画像解析を用いたインフルエンサーのファン分析により、最適かつ効率的なインフルエンサーのキャスティングを実現するプラットフォーム「iCON Suite」。ツール自体の利用は無料で、個別のインフルエンサーとの契約について、費用が発生する仕組みとなっているという。
同ツールの特徴について、平良氏は「可視化」というポイントを挙げる。「インフルエンサーのファン属性、デモグラ情報を機械学習で推定する機能」「施策実施後にハッシュタグがどれだけ拡散したか、可視化してレポートする機能」の2点が主な機能だ。
また日本国内におけるフォロワー数1万以上のユーザーをデータとして保持。これを基に、クライアントと施策をプランニングし、キャスティングを行うという。施策の提案では、「クリエイティブだけでなく、それぞれのファン属性、住む場所などを考慮してリストアップする」と、平良氏は説明する。
実際の施策とその結果
ディスコートのキャンペーン施策では、3000名から3万名のフォロワーを擁するインスタグラマーを、インフルエンサーとして15名ピックアップ。彼女らに3万円分のチケットを配布し、実店舗で気に入ったものを購入してもらい、コーディネートした写真をインスタグラムにアップしてもらった。
2016年9月から10月のキャンペーン期間中、15人のインフルエンサーが投稿した数は計69。それらに対する いいね! の数は約4万7000件、ディスコートの公式アカウントのフォロワー数も約550件増加したという。植原氏は総括として、「初の試みだったが、数値からさらなる可能性を感じる」と語る。
しかし、「もっと効率的に行えないか」と、課題も述べた。たとえば、15名のインフルエンサーのなかでもブランドとイメージが合う・合わないがある。「投稿に対する反応が高くても、ブランドとして欲しい反応は、ターゲット層からの共感だ」と、植原氏は説明した。
たとえば、女性をターゲットにしたアパレル商材の投稿に、男性からコメントが寄せられても意味がない。しかも、バッチリとコーディネートを決めた写真だけをアップされ、どこかビジネスライクな印象を与えてしまったインフルエンサーもいた。「投稿から個人のライフスタイルが垣間見えるのが望ましい」。
クリエイティブ面について、「ブランドに合った人、合ったクリエイティブをセレクトするのは、インフルエンサーマーケティングにおける最大の課題」と、平良氏は語る。現状では、最低でも半年、1年くらい施策を繰り返していくなかで、お互いのフィーリングが合い、かつビジネスのインパクトが出てくる着地点を模索していくことが大事だという。
さらなる課題は「KPIの設定」
インフルエンサーマーケティングにおけるもうひとつの課題は「KPIの設定」だ。平良氏は、いいね! やコメントといった「エンゲージメント」がKPIとして重要視される理由について「インフルエンサーマーケティングは、ファンとの近さ、親密性を軸に仕掛けるもの。だからこそエンゲージメントが有効な指標となりうる」と述べる。
「投稿に対しフォロワーから『このブランド、私も好きだったんです』という反応が返ってくるパターンが、最終的には一番成功しやすい」と、平良氏。「たとえば、ゲームの事例では、当初ゲーム好きではなかったインフルエンサーが、やりこんでいくうちに、その楽しさを理解し、代弁者になるケースもあった」。
今後は、ブランドの認知度向上をいかにして店舗来店やECでの購入につなげていくか、「コンバージョンに対する費用対効果に期待したい」と植原氏は述べる。さらに「写真へのエンゲージメント数とECサイトへの流入、最終的な購買(CV)をデータ化して見えるとありがたい」と注文をつけた。
進化する「iCON Suite」
この点について平良氏は、今後の「iCON Suite」のサービスのアップデートについて説明。ポイントは、インフルエンサーのデータとレポート機能の拡充だ。
この11月、インフルエンサーのデータ拡充の一環として、YouTubeやTwitterなど、ほかのSNSでのインフルエンサーのデータを「iCON Suite」に反映させた。「2017年にはSnapchatのデータも統合予定で、『iCON Suite』上でSNSを横断してインフルエンサーとそのデモグラ情報の検索ができるようにしたい」と、平良氏は述べる。
また、効果を可視化するレポート機能については、クライアント自身によるレポート取得を可能にしていくという。こちらは年内をメドに実現する予定だ。「定型的なレポートの自動出力を第1段階に、第2段階ではクライアントの要望に合わせたカスタマイズに取り組んでいく」。
インフルエンサー施策の未来
ちなみに、「成功パターン」を学習・集積した結果、インフルエンサーマーケティングの実施がシステム化・自動化されることは可能なのだろうか? というのも、誰かの真似をしてもうまくいくとは限らないところに、インフルエンサーマーケティング特有の体系化の難しさがあるからだ。
平良氏は、「あと5年くらいすれば、技術進化によりお好みをオーダーしたら自動でインフルエンサーリストとクリエイティブ案が提示される世界が実現するだろう」と、期待を寄せる。そのうえで、「いまの技術でもスピード感をもってマーケティングが回していくことが大事」とつけ加えた。
「我々は自社にインフルエンサーを抱えていない、逆にいえば、特定のインフルエンサーに偏っていないという特徴がある。これを生かし、中立的なポジショニングからデータに基づいた施策提案を行う。インフルエンサーマーケティングのプラットフォーマーとしてのポジションを確立していくことが、今後の目標だ」。
▼植原邦雄
株式会社パル ディスコート ディレクター
大阪府生まれ、ミヤケデザインスタジオにてイッセイミヤケ パリコレクションのデザインからコレクション運営などを担当。1997年に独立しhuit co.,ltdを設立。自社ブランドの立ち上げから、ヨウジヤマモト、良品計画、フラボアなど数多くの企業とデザイン契約を結ぶ。2007年に(株)パルと契約しディスコートのクリエイティブディレクターに就任。ブランドの建て直しから新規ブランドの立ち上げに尽力。
▼平良 真人
THECOO株式会社 代表取締役CEO
神奈川県生まれ、一橋大学社会学部卒。伊藤忠商事、ドコモAOL、SONYにて営業、マーケティング、ビジネス開発に携わる。 2007年、Google株式会社へ。 2010年からは統括部長として第二広告営業本部を立ち上げ、営業基盤の確立を通して同本部の成長に尽力。2014年、THECOO株式会社(旧:ルビー・マーケティング株式会社)を設立し、代表取締役CEOに就任。
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Written by 阿部欽一
Edited by 広告制作チーム