効果測定事例

    2018年5月10日

    動画広告の効果を正しく評価することで、新規顧客獲得の機会を創出

    ネスレ日本株式会社
    媒体統括部媒体統轄室 ユニットマネージャー
    村岡慎太郎氏

    TABLE OF CONTENTS

      • ラストクリックアトリビューションモデルでは、動画広告など態度変容型広告のKPIへの貢献度を数字で可視化できないため、刈り取り型広告への予算配分が多くなっていた
      • 事業を伸ばしていくために新規需要創造は不可欠だが、それに効く広告の特定ができなかった
      • 広告のKPIへの貢献度の評価には、マルチタッチアトリビューションモデルの採用、そして人ベースのカスタマージャーニーを踏まえた測定が欠かせない

      新規需要創造を阻むマーケティングの実状と課題

      新規需要創造を阻むマーケティングの実状と課題

      「ネスカフェ アンバサダー」は、アンバサダーになると、無料でコーヒーマシンを借りられ、職場でおいしいコーヒーを楽しめるネスレ日本が提供しているサービスです。「ネスカフェ アンバサダー」の認知度を高めるため、オフライン広告からオンライン広告まで様々な手法の広告を展開しました。KPIとなるのは応募数。ラストクリックアトリビューションモデルで評価すると、動画など態度変容型広告のほとんどは応募数に寄与していないという結果になっていました。村岡氏は、「動画広告が寄与していないはずはないことは分かっていました。ですが、これを数字で可視化することができず、結局、貢献度がラストクリックアトリビューションモデルで評価されやすい検索連動型広告やアフィリエイト広告などの刈り取り型広告への予算配分が多くなっていました」と語ります。しかし、これらの広告で獲得できるのは、既にサービス利用を検討している購買ファネル下部の顧客。

      「中長期で事業を伸ばしていくためには、まだ認知していないファネル上部の潜在顧客に態度変容を促し、新たな需要を創り出さねばなりません。ですが、新規需要を創造するにも、どの広告が寄与して、どの広告が寄与していないのかがわからない。それがいちばんの課題でした」

      コンバージョン前に経由した広告の効果を評価するマルチタッチアトリビューションモデルに対し、ラストクリックアトリビューションモデルは多くの広告の効果を評価できない

      マルチタッチアトリビューションモデルとコンバージョンリフト

      マルチタッチアトリビューションモデルとコンバージョンリフト

      そこで、2つの手法を使ってオンライン広告の効果測定を行いました。1つめはマルチタッチアトリビューションモデル。複数のチャネルで展開するマーケティング施策を総合的にとらえ、それぞれの施策の売上への貢献度を割り出すモデルです。2つめはコンバージョンリフト。2つのグループをつくり、テストグループには広告を表示し、もう一方のコントロールグループには広告を表示しないようにすることで、コンバージョン率に統計的有意差が生じるかどうか判断する手法です。

      これらの測定を行ったところ、驚きの結果が出ました。

      「Facebookでの広告の実際のコンバージョンへの貢献度は、ラストクリックアトリビューションモデルで評価した際の約40倍もあったことが分かりました」

      ラストクリックアトリビューションモデルは広告の効果を実際の1/40で評価していた1

      コンバージョンリフトとマルチタッチアトリビューションのモデルで検証した結果、どれもラストクリックとは大きな乖離が認められた2

      MTAモデル1(7日間時間減衰モデル):7日で広告の効果が半減すると想定し、アトリビューションするモデル。
      MTAモデル2(40-40 接点ベースモデル):最初と最後の広告接触に、それぞれ40%の効果を配分するモデル。
      MTAモデル3(ラストタッチ):最後に接触した広告(クリック&ビュー)に100%のクレジットを与えるモデル。

      「態度変容型広告は貢献しているはずという仮説はありましたが、これほどまでとは思いませんでした。この結果を受けて、予算配分の見直しを図っています」と村岡氏は評価しました。

      「もちろん、この結果が当てはまるのは動画だけではありません。バナー広告などを含めたすべての態度変容型広告にも同じことが言えると予想できます。トラフィックの多い媒体にバナー広告を出したところ、ほとんどクリックはされていませんでしたが、新規顧客へのアンケートを見ると、バナー広告を見て応募したという回答が多く、ラストクリックベースの計測結果とは乖離がありました。これこそビュースルーによるコンバージョンでした。これにより、態度変容型広告の効果を見直さないといけないと思いました。刈り取り型広告の貢献度はこれまで通り認めながらも、ビューの効果を適切に評価して、動画やバナーなどへの予算投下の割合を増やすことを検討しています」

      人ベースのジャーニーを踏まえた測定が重要

      人ベースのジャーニーを踏まえた測定が重要

      なぜ、このような乖離が起こったのでしょうか。もっとも大きな理由は、消費者が商品やサービスを認知してから購買に至るまでにある程度の期間を要していることです。Facebookの調査では、オンラインで情報収集を始めて意思決定までに要する期間はアパレルでは約10.1日、美容・化粧品では10.5日、家電製品でも10.5日です。3「ネスカフェ アンバサダー」は導入前に職場内での合意が必要になることから、検討期間はより長くなる場合もあります。また今回の調査では、Facebookはコンバージョンに至るパスの初期に接触するケースが多いことも分かりました(下図参照)。広告への接触によるすべてのコンバージョン数のうち74%が、最初にFacebookに接触していたのです。Facebookはリーチしたいユーザーのタイムライン上に動画広告を表示し、日常的に広告と接触させることができます。興味を覚えたユーザーは、「ネスカフェ アンバサダー」を検索してコンバージョンに至ることが多いと考えられます。ラストクリックアトリビューションモデルで測定できるのは、あくまでコンバージョンに至った最後の行動のみ。だからこそ、人ベースのカスタマージャーニーを踏まえた測定が重要になるというわけです。

      Facebook広告は最初の方に接触し、検索連動型広告はよりコンバージョンに近い方で接触していた割合が多い4

      人ベースでの測定とメディアプランニング実現に向けて

      人ベースでの測定とメディアプランニング実現に向けて

      「ラストクリックアトリビューションモデルの測定結果に違和感があると感じているマーケターは多いと思います」と村岡氏。

      「仮説があるなら、とにかくスモールスタートでまずはやってみて、できるだけ短い期間でPDCAを回していくことです。その結果を見極め、効果があるのであれば大きく展開することが大事かと思います」

      正しい測定ができないラストクリックアトリビューションモデルの結果にもとづく投資配分では、適切な頻度とタイミングで顧客へアプローチすることができなくなります。ネスレ日本では、今回の測定結果も踏まえ、ビューの効果も含めた正しい広告の貢献度をクロスメディアで測定し、速やかに投資配分へフィードバックするサイクルを社内外のパートナーと構築し始めています。

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