デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語を、わかりやすく説明する「Q&A」シリーズ。今回は、「コンテクスチュアルターゲティング」について解説します。
プライバシー保護重視の潮流が広がる昨今、Cookieレスソリューションのひとつとして、「コンテクスチュアルターゲティング」が注目を集めています。
コンテンツの「コンテキスト(文脈)」を読み取り、そこに最適な広告を配信するこのターゲティング手法。現状、デジタル広告の主流である「オーディエンスターゲティング」とは、ユーザーの行動データを「必要としない」という点で根本的に異なります。しかし原理的には、この手法は決して新しいものではありません。
「テレビCMも、雑誌のタイアップ広告や屋外広告も、広義ではコンテクスチュアルターゲティングだ」と、コンテクスチュアル広告のソートリーダー、GumGumでHead of Sales, Japanを務める松本亮氏は語ります。「だが、最新のコンテクスチュアルターゲティングでは、プライバシーを保護しながら、デジタル広告の配信面一つひとつに目を向け、生活者との接点を細かくデザインできる」。
デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語を、わかりやすく説明する「Q&A」シリーズ。今回は、ポストCookieソリューションの有力株と目されている「コンテクスチュアルターゲティング」について解説します。
──まず、「コンテクスチュアルターゲティング」、ひと言で表現すると?
コンテクスチュアルターゲティングは、デジタル広告におけるターゲティング手法のひとつです。これを利用すれば、Webページ上にあるさまざまなコンテンツのコンテキストを分析し、それに合わせて広告を配信できるようになります。つまり、この技術によって、コンテンツと広告の高い親和性、加えて高度なブランドセーフティを実現できるのです。また、生活者の行動データを使用しない点も大きな特徴のひとつといえるでしょう。
──なるほど…つまり、最先端のアドテクノロジーなんですね?
そうですね、確かにそういう部分は多分にあります。ですが、実は「広告をコンテンツと関連づけて、魅力的に見せる」というコンテクスチュアルターゲティングの原理は、伝統的なものといえなくもありません。
「テレビCMも、雑誌のタイアップ広告や屋外広告も、コンテクスチュアルターゲティングと同義である。というのも、『自社ブランドのイメージを、どういったコンテンツやシチュエーションと関連させて、消費者に印象付けたいか』という発想のもと行われるからだ」。
2008年の創業から、コンテクスチュアルターゲティングのソリューションを提供しているGumGumの松本亮氏はこう指摘します。米国では現在、コンテクスチュアルターゲティングを提供する企業は12社実在しているのですが、GumGumは、なかでももっとも早期からこの分野に着目した、いわばソートリーダーです。
──「コンテンツ連動型広告」や「キーワードターゲティング」という手法もあります。それとは、違うのですか?
Webサイトやカテゴリーを括るコンテンツ連動型広告や、キーワード単位でのマッチを行うキーワードターゲティングも、原理的にはコンテクスチュアルターゲティングと同じといえるでしょう。
ただコンテクスチュアルターゲティングは、ページ単位でフル解析をしたうえで配信を行います。つまり、ターゲティングのために参照する要素が圧倒的に多く、精度も高くなります。このことから松本氏は、「コンテクスチュアルターゲティングは、コンテンツ連動型広告やキーワードターゲティングの進化系だ」と説明しています。
──ふむ…。でも、なぜいま、コンテクスチュアルターゲティングが注目されているのでしょう?
AppleによるIDFA(Identifier for Advertisers)規制や、2022年に控えているGoogleによるサードパーティCookieのサポート終了に見られる、プライバシー保護重視の潮流が背景にありますね。というのも、コンテクスチュアルターゲティングは、現在主流となっている「オーディエンスターゲティング」とは異なり、サードパーティCookieやIDFAといった広告識別子を必要としないからです。このことが、昨今多くのブランドやエージェンシーが、コンテクスチュアルターゲティングに注目する理由になっています。
もちろん、コンテクスチュアルターゲティングのほかにも、「Cookieレスソリューション」は存在します。ファーストパーティデータの活用、共通IDソリューション、GoogleのPrivacy Sandbox(プライバシーサンドボックス)などです。ただ松本氏によると「なかにはまだ開発中の技術で、実現度合いの不透明性が高いものもある」ようです。
──では、コンテクスチュアルターゲティングの特徴や強みは?
コンテクスチュアルターゲティングは、ブランディングの領域、たとえば「新規顧客への認知拡大」や「リブランディング施策」などと非常に相性が良いといいます。
というのも、普段の人間関係において第一印象が大事なのと同様、新たなイメージを広めていく施策では、非常に細かな配慮が必要だからです。コンテクスチュアルターゲティングなら、リアルタイムの興味・関心情報をベースに、配信先のコンテンツとのマッチングのみならず、生活者のモーメントを捉えた繊細なターゲティングが可能。アプローチの仕方も、「〇〇な気分な時には〇〇が合いますよ。いかがですか?」という、先回りをした提案をすることができるのです。
一方、前述したほかのCookieレスソリューションは、従来型のオーディエンスターゲティングと同様、「過去の行動パターン」をベースにしています。こうしたアプローチは、リマーケティングなど、過去のデータに基づき類似の行動を促す施策には効果的である一方、モーメントへの配慮など、ブランディング領域に求められる、繊細なアプローチには適していないと松本氏は指摘します。
──つまり、文脈を読まないと、いわゆる「嫌われる広告」になってしまいかねないと…?
その可能性はあるでしょう。もちろん、コンテクスチュアルターゲティングでなくとも、目的に合った利用であれば問題ありませんが。
しかし、現状のデジタル広告の世界では、ブランディング施策においても、オーディエンスターゲティングといった「過去のデータをもとにした手法」が多く利用されているのが実情です。その結果、押し付けがましいコミュニケーションが溢れかえり、デジタル広告が「嫌われる」事態にもつながっています。
こうした現状を変えるべくGumGumは、デジタル広告のメインストリームとはある種「真逆のアプローチ」である、コンテクスチュアルターゲティングに拘ってきました。「昨今、プライバシー保護重視の潮流が広がり、従来の広告手法は立ち行かなくなりつつある。いまこそ企業は、デジタル広告の配信面一つひとつに目を向け、生活者との接点を細かくデザインする方向に、舵を切るべきだろう」。
──どのようなブランドに、どのくらい利用されているのでしょう?
グローバルにおけるコンテクスチュアルターゲティングの活用は、日本と比べてかなり進んでいます。GumGumのソリューションを例に挙げると、米国ではフォーチュン(Fortune)が定めるTop100のブランドのうち80%以上が、同社のソリューションを恒常メニューとして活用しています。現在プライバシー重視の潮流が広がっていることから、今後その利用は一層増えていくでしょう。
国内でも、飲料やソフトウェア、自動車、化粧品、高級アパレルといった大手ブランドが、GumGumのソリューションを導入しています。またGumGum Japanは、独自の実績や知見を基にしたフレームワーク、Context Discovery(コンテキスト・ディスカバリー)の提供を今年からスタート。現在、コンテキストの最適解を発見するプロジェクトを、広告主とともに進めているといいます。さらに同社は、コンテクスチュアル広告に関する情報発信も、積極的に行なっています。Contextual Insider(コンテクスチュアル・インサイダー)というGumGumの自社メディアでは、グローバルなソートリーダーとして、同社が蓄積してきた知見が公開されています。
ただ、コンテクスチュアルターゲティングの導入に、ハードルの高さを感じている広告主も少なくありません。そこでGumGumでは、専門スタッフが提案から制作・配信・レポーティングまでをフルサポートする体制も構築しています。松本氏によると、GumGumのソリューションを導入する敷居は決して高くなく、広告主側への負担も大きくないといいます。
「ここ数カ月、いよいよ広告主がプライバシー保護の対策を本格化しはじめており、国内でも多くの引き合いがある。新たな手法を探している広告主には、コンテクスチュアルターゲティングをワンストップで導入できる、Context Discoveryをぜひ取っ掛かりとしてご活用いただきたい」。
──コンテクスチュアルターゲティングは、今後どのように発展していくと思いますか?
さまざまな可能性が考えられます。まずはテクノロジーの側面から。直近の話でいうと、GumGumではいま動画領域に注力しています。これは、動画の内容をAIがピクセル単位で分析をし、最適な広告を配信するというのもの。松本氏によると、同社は2022年にも日本でこのテクノロジーを活用した、OTTソリューションを展開していくそうです。
また、現在のコンテクスチュアルターゲティングがベースにしているのは、あくまでコンテンツの分析結果を基にしたもの。しかし松本氏によると、将来は「たとえば、脳波といった何らかの信号に基づいて、『生活者の気持ち』により一層寄り添ったターゲティングが可能になるかもしれない」といいます。
さらに商品開発に関しても、「20代男性向け商品」といった「デモグラカット」で行う手法から、「〇〇な気持ちが高まったときに使ってもらう商品」といった「モーメントカット」が主流になっていくかもしれません。
「今後、コンテクスチュアルターゲティングが主流になれば、既存のブランドマーケティングのあり方に多大な影響を及ぼす可能性がある」と、松本氏は締めくくります。「コンテクスチュアルターゲティングは、その可能性を秘めている」。
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Written by DIGIDAY Brand STUDIO
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